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市民記者 No.311 ライ丸
 
■コラム:きらきらのあの日
「供する」
2008年10月17日

小学校の一時期、日曜学校に通った。休日の早朝に教会へ出かける物好きな子と家族は見ていた。小4のクリスマスのことだ。降誕劇、キャロルの合唱が終わり、夕食会が始まった。

持ち寄った食べ物が食卓に並べられる間、手ぶらで来た私はうつむいていた。そのとき、差し入れが届けられたと教会の人がお皿を運んできた。盛られていたのは母が特別な時に作るクリームチキンサンド。スナフキンに似た先生が「おいしいよ、これ」とほおばりながら、私に言った。わが家のご馳走を多くの人と分け合った初めての体験だ。教会からは自然に足が遠のいたが、この時のうれしさは、「我らの日用の糧を今日も与えたまえ」と唱える主の祈りと共にいまも覚えている。

大学時代、修道院の学生寮にお世話になった。カトリックの中でも厳しい戒律と評判のスペイン系宗派だったが、入寮の条件に宗教の有無は問われなかった。武蔵野周辺の大学に通う女子学生たちが40、50人も寄宿していたろうか。やれシャワーの時間だ門限だと何かときゃぴきゃぴした年頃の娘たちと、グレーの僧服に身を包んだ修道女たちの取り合わせは面白かった。

クリスマスミサの日、勝手のちがいに戸惑った。まず賛美歌だ。1小節に音符が1つ、これに言葉が詰め込まれている。歌というより失礼ながらお経に聞こえた。いや、お経だったのかもしれない。お祈り係を申し付けられて最前列に坐っていた私は、隣席の二人に倣いシスターの前に進み出て、なにやらうすぺらい楕円形の物を受け取った。後で返却を求められた。それは信者にだけ与えられるマナというパン、不信心の者はお呼びではなかったのだ。

蛹から羽化した直後の蝶には重大な瞬間が待っている。翅をきちんと開くことができなければ、飛べない一生、すなわち死を迎えるしかない。実家の庭で出会った蝶はまさにその運命を負い地面でばたついていた。感傷的ではという両親の静止も聞かずに、家に連れ帰った。

床を歩きつつ羽ばたきそこねて落下する。翅が散る。見かねて新聞紙を敷き詰めたら、脚音がトットットッと響く。心地よくも哀しい音だ。食餌は、嗜好に合ったポカリスエットを与える。容器の場所がわからないので指に乗せて、口吻を伸ばすのを待つ。ある晩、今夜の寝場所に定めた椅子の脚からするすると下りてきて、自力で容器にたどり着き飲んだ。そして戻った!びっくりした。『アルジャーノンに花束を』に出てきた、いっとき天才になったネズミかと思った。そんな明晰さはその夜だけで元の習慣に戻った。

2週間生きて逝った。客人をもてなした気分で私の日々はキラキラしたが、果たして自然の中で朽ちるに任せた方がよかったのだろうか。

 
 

ライ丸


ペンネームの由来は、クマのはずが仔ライオンになってしまった手作りのテディベアの名前とか。鎌倉で育ち、中高は横浜の学校に通い、現在は藤沢在住。昼は都内の中学、夜は塾で子どもを相手に奮闘中。舞台とドキュメンタリー映画を好み、みちのくの旅へもぶらり。夢は全国の祭めぐり。



 
藤沢市市民記者一周年記念誌「ふじ記第1号」
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「市民記者養成講座」は慶應義塾大学金子郁容研究室(文部科学省/現代GPプロジェクト)と藤沢市の共同で開催され、ISIS編集学校(編集工学研究所)のカリキュラムの一部が利用されています。また、この市民記者のページは編集工学研究所のサポートで運用されています。